お茶の摘採時期による違い。
お茶は4月下旬の新茶の時期に摘採するものを「一番茶」。次に6月ごろから刈り取る「二番茶」。その後は「三番茶」。最後は「秋冬番茶」まで、時期による分類がされています。茶葉の副産物でる棒茶も同様に「一茶棒」、「二茶棒」、「番棒」と区分されます。茶葉の場合と同様「一茶棒」が上級品とされており、特に焙じ加工した時の旨みや香りには大きな違いがあります。
茎の部位でも違いが生まれる。
新芽が出てきたばかりの茶葉は、まだ茎も伸び切っていません。茎は葉と同様に柔らかく青々としています。この茎の味わいはは比較的茶葉に近くコクのある味わいと強い焙じ香を放ちます。この茎茶を当工房では「青棒」と呼んでいます。
もう少し茶葉が成長すると茎の部分は徐々にその青色を薄くし若草色のような明るい白みを帯びてきます。私たちはこの茎を「白棒」と呼びます。上質な白棒は浅く焙じることで、ラベンダーやバラの花と同じ成分の香りをともなう、やわらかで上品な焙じ香を生み出します。
茶葉が更に成長すると、茎は徐々に赤みを帯びて枝へ変化をはじめます。茎は太く硬くなり、それに伴いお茶としての味わいは薄れていきます。「赤棒」、時には「鬼棒」と呼ばれるこの茎茶は加賀棒茶加工において極力避けるべきものと考えています。
焙じ具合も、味わいに大きく左右する。
加賀棒茶の焙煎をおこなう時、焙じ具合も味わいを決める重要な要素となります。加賀棒茶の材料に含まれる旨み成分は、200℃をこえるような高温にさらされる事で焙じ香成分に変化してゆきます。焙じを浅くすると旨み成分が多く残り、茶本来の味わいを強く感じる加賀棒茶となります。焙じ具合を深くすると、徐々に焙じ香が強くなるとともに甘みが加わってきます。当工房ではお客様が嗜好に合わせてお選び頂けるよう「浅炒り」「中炒り」「深焙じ」、3区分の焙じ具合で加賀棒茶をお届けしています。
焙煎の熱源による違いも大切。
熱エネルギーの伝わり方には「伝導熱」と「輻射熱」があります。伝導熱は熱源との接触による熱エネルギーの移転です。フライパンでお肉をソテーするイメージです。一方で輻射熱は熱源から発せられる波動(遠赤外線など)により分子レベルで水分を振動させ熱するものです。石窯で焼くピザや、石焼き芋が良い例です。
加賀棒茶を伝導熱で焙煎すると外側から熱が入るため、外側はかりっとした焙じ具合になり、内側にうま味成分が残るため、お茶の味をしっかり味わうことのできる加賀棒茶に。輻射熱で焙煎すると熱は棒茶の芯の部分から入るため、ふっくらとした香り立ちの良い加賀棒茶に仕上がります。当工房では3種類の焙煎機を使用して伝導熱と輻射熱の両熱源を加賀棒茶の焙煎に活かしています。